贈り物はモノじゃなくてコトじゃないかと思ってしまうのです
思い返して、「なんてロマンチックなんだろう!」
と思うことがあったことを思い出した、ちいさなブローチ。
今日の朝、ワンピースに袖を通す。
ちいさな汚れがついていた。
それはちょうど、ブローチがあれば隠せちゃうなってくらいの大きさで、ブローチをしてもおかしくない位置に汚れはあった。
私は「あれ、どこいった?」と思いながら、目的のブローチを探し、探しながら「あぁ、あんなに大事なものなのに!」と思い出が、コロコロと湧いてきた。
そのブローチは陶器で出来ていて、黄色く染色されている。模様はお花。
優しく、トンとしている。
ブローチを見つけたのは、私が上京する前に、母と買い物に行った時のことだった。
ケチな母は、絶対私に「なにか買ってあげようか?」と病気になってる時以外は聞いてこない。
それなのに、家を出ると知ってか、「なにか気に入ったもの買ったろか?」ときいてくれた。
その気持ちが嬉しくて、私は店内を周り、ブローチを見つけたのだ。
お気に入りだったブローチは、何度かつけていた。
そして、彼とデートしている最中、いつの間にかなくなっていた。
かがんだタイミングか、ふとした瞬間に落としてしまったようである。
ひととおり探してみたり、わめいたりしてみたけれど、見つからず、私は諦めることにした。
それからしばらく経っていた。
彼は理由をつけては、よく東京に遊びに来てくれたのだが、そんなある日。
空港からバスに乗ってやってくる彼を待つ。
降りてきて、目印のコーヒーショップ前で待つ私に「やあ」と声をかけて来る。
「お土産買ってきた」と、ちいさな箱をちらつかせる。
箱、、、。チョコレート菓子かな。なんて思いながらリボンをほどいて、箱を開けると、
いつかの日に落としてしまっていたはずのブローチだった。
「え!なんで!?どうやって!??」
彼は同じものを見つけ、
さらに、もう落とさないように工夫されているバージョンのものをプレゼントしてくれたのだ。
たまたま見つけたのかもしれないし、必死に探したのかもしれない。
それは聞かなかったけれど、覚えてくれていたこととか、思い出の品だからと同じものをプレゼントしてくれたことに、私はとても感動した。
時を経ても、ブローチを付けると思い出す。
大切な誰かの想い。
そして、私のちいさな思い出。
贈ってくれたのは、モノでありながら、コトなんだと思った。
そんな日でした。